今年も、赤く実ったりんごが届く季節となりました。
3月のある晩のことを思い出します。
あの痛ましい日から、数日。
たまたま予定をしていたわたしは、札幌にいました。
まだ被害の全貌も分からない頃
街を歩く、静かな姿も混乱を内に秘め
この国で傷ついていないひとは、誰もいないようでした。
そんな晩、伺った小さなお店。
あたたかい灯の下、長い木の机の前には
すずめが暖をとるように、並ぶいくつもの背中。
知らないひと同士が、椅子をつめて座る狭さに
安心したかったのかもしれません。
「こんな時こそ、普通に生活してください。それがまずは支援になる…というけれど
どうしていいのか、分からなくなるんです」
おだやかな女主人が、素直に混乱を口にして、それでも何とかほほえみながら
机の上に置いてくれたのは、丁寧に切り分けられたりんごでした。
わたしは心のこもったそのお皿を見て、思いました。
今してくださったように、ひとつひとつりんごをむいて、きれいに切り分けていく
そんなことから、日常が戻ってきてくれるのではないかと。
忘れてはいけない1年も、残りわずか。
北の町では、赤い実の並ぶ窓枠に雪がかかるのでしょうか。
ことばにならない思いとともに
改めて心をこめて
お祈り申し上げます。